部屋が片付けられない悩みは、当事者にとって単なる「散らかっている」という状態以上の深刻なストレスです。「だらしない」と自分を責め、誰にも相談できずに孤立してしまうケースも少なくありません。ADHDやASDなどの特性により、片付けが困難な場合、個人の努力だけで解決するのは非常にハードルが高いことです。そこでおすすめしたいのが、公的な「発達障害者支援センター」と、民間の「片付けサービス(整理収納サービス)」をうまく連携させて活用する方法です。福祉の視点とプロの技術を組み合わせることで、リバウンドしにくい環境を作るためのアプローチについて解説します。
そもそも「片付け」は高度な脳の作業
片付けは、ただ物を移動させるだけの単純作業ではありません。「要・不要の判断」「分類」「配置」「順序立て」「維持管理」といった、脳の実行機能をフル活用する非常に高度なマルチタスクです。
発達障害の特性がある場合、この実行機能の一部に苦手さがあることが多いため、片付けにつまずくのは脳の機能上、仕方のないことでもあります。しかし、一般的な片付けのアドバイスは「努力」や「習慣」を前提としていることが多く、特性を持つ人にとっては実践が難しく、かえって自己肯定感を下げてしまう原因になりがちです。だからこそ、自分一人で抱え込まず、外部のサポートを利用することが重要になります。
発達障害者支援センターの役割とは
発達障害者支援センターは、発達障害のある人やその家族が、地域で安定して暮らせるように総合的な支援を行う公的な専門機関です。ここでは、生活上の困りごと全般について相談ができ、その人の特性に合わせたアドバイスや、必要な福祉サービスへのつなぎ役を担ってくれます。
片付けに関しても、「なぜ片付けられないのか」という根本的な原因を、専門の相談員と一緒に分析することができます。例えば、注意欠如によるものなのか、こだわりによるものなのか、あるいは二次障害によるうつ状態で意欲が低下しているのかなど、背景を整理し、生活全体を整えるための「作戦会議」を行う場所と言えます。ただし、センターの職員が直接家に来て片付け作業をしてくれるわけではありません。
民間の「片付けサービス」との違い
一方、民間の整理収納サービスや家事代行サービスは、実際に家に入り、物理的に物を動かして部屋をきれいにする「実働部隊」です。プロの技術で短時間に環境をリセットできるため、即効性があります。
しかし、一般的な片付け業者の場合、発達障害の特性に対する知識が十分でないこともあります。「普通はこうします」「捨てないと片付きません」といった一般的な正論を押し付けられると、当事者は傷つき、作業自体が苦痛になってしまうリスクがあります。また、一度きれいになっても、本人の特性に合った収納システムでない場合、すぐに元に戻ってしまう(リバウンド)ことも少なくありません。
「連携」させることの最大のメリット
そこで推奨されるのが、この二つを連携させる、あるいは並行して活用することです。これには大きなメリットがあります。
まず、支援センターで自分の特性や困りごとの傾向を把握してもらうことで、自分に合った片付けの方針が見えてきます。その上で、センターから「福祉住環境コーディネーター」や「整理収納アドバイザー」といった資格を持ち、かつ障害特性に理解のある専門業者や事業所を紹介してもらえる場合があります(地域のリソースによります)。
また、民間のサービスを利用する際も、支援センターの担当者に相談に乗ってもらいながら進めることで、「業者に何をどう伝えたらいいか分からない」という不安を解消できます。業者が入ることへの心理的なハードルを下げ、安心して作業を任せられる体制を作ることができるのが、連携の最大の強みです。
大人に多い不注意優勢型ADHD(ADD)のための頭が休まる部屋作り
失敗しないための利用ステップ
実際に連携してサービスを活用するためのステップを紹介します。
まずは、地域の「発達障害者支援センター」に相談予約を入れます。そこで、片付けられない悩みと、それが生活にどのような支障をきたしているかを正直に話します。
次に、センターのアドバイスを受けながら、具体的な解決策を模索します。もし民間の片付けサービスを利用したい場合は、「特性に理解のある業者はいないか」「福祉サービス(居宅介護など)の中で対応できる範囲はあるか」を確認します。
業者を選定したら、事前のヒアリングで自分の特性(捨てられない、判断に時間がかかるなど)をしっかり伝えます。可能であれば、支援センターの担当者から業者へ、特性についての補足説明をしてもらうのも有効です。そして、一度お試しで小さな箇所から作業を依頼し、相性を確認してから本格的な依頼へと進みましょう。
一人で頑張ることを手放そう
部屋が汚いことは、あなたの人間性とは関係ありません。それは単に、現在の環境と脳の特性がミスマッチを起こしているだけです。
支援センターと片付けサービスという「チーム」を作ることは、決して甘えではありません。それは、あなたが社会生活を健康に送るために必要な「環境調整」という前向きな手段です。一人で悩み、自分を責める時間を終わらせ、専門家の力を借りて、安心してくつろげる空間を取り戻してください。